@pal_mouri 様、ご回答遅くなり申し訳ございません。
いつもお世話になっております
Toradex Japanのアルバロです。
詳細なご説明をいただきありがとうございます。
eMMC におけるビットエラーに対するデータ保護および訂正についてのご質問ですが、
基本的にはビットエラーの検出および訂正はeMMC デバイス自体で処理されており、Linux のファイルシステムドライバ側で行われるものではありません。
本モジュールに搭載されている 32GB の産業用 eMMC(Kingston など複数ベンダーから調達) には、ECC(Error Correcting Code)を備えた内部コントローラ が実装されています。
この ECC は eMMC デバイス内部で動作し、下層のフラッシュメモリを透過的に保護します。
内部で訂正できないエラーが発生した場合は、eMMC からホストシステムへ読み書きエラーとして通知されます。
Linux 側の動作としては、
・MMC ドライバおよびファイルシステム(ext4 など)は、ビットレベルでのエラー訂正は行いません。
・ext4 はジャーナリングやチェックサムによりファイルシステムのメタデータ破損は検出できますが、
カーネルイメージのような通常のファイルデータ自体を保護する仕組みはありません。
・そのため、ファイルシステムはブロックデバイスから正しいデータが返ってくることを前提としています。
ご説明いただいた状況から判断すると、
バージョンアップ後に発生したカーネル破損は、eMMC のランダムなビットエラーが原因である可能性は低い と考えられます。
特に産業用 eMMC において、ECC をすり抜けるランダムなビットエラーは非常に稀です。
一方で、以下のような アップデート手順に起因するリスク は一般的に考えられます。
・システムパーティションを RW で再マウントし、ブートに関わるファイルを直接書き換えている
・書き込みバッファのフラッシュやファイルシステムのコミットが完了する前に電源断やリセットが発生している
・アトミックな更新やロールバック機構が存在しない
カーネルやブート関連ファイルが上書き中に中断された場合、
ファイルが不完全な状態で保存され、U-Boot でのカーネルロードに失敗し、再起動を繰り返す事象につながる可能性があります。
参考として、Torizon ではブートに関わるシステムファイルを直接書き換える方式は採用していません。
Torizon ではOSTree ベースのアトミックアップデート機構を使用しており、
・新しいシステムイメージとして更新を保存
・更新完了後にのみ新バージョンへ切り替え
・起動失敗時には自動的にロールバック可能
といった仕組みにより、電源断や更新中断による破損リスクを大幅に低減しています。
外部のアップデートツールをご使用の場合は、
・アトミック更新または A/B 構成になっているか
・再起動前に十分な同期および検証が行われているか
・障害時にロールバックできる仕組みがあるか
といった点をご確認いただくことをお勧めいたします。
本回答が、データ保護の仕組みおよび今回の事象の切り分けにお役立ていただければ幸いです。
以上、引き続きよろしくお願いいたします。
アルバロ。